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限りなく透明に近いブルーに見る若者と酒文化 閉塞された世の中を変えるには?

楽しまない、自分を追い込むという若者の最後の抵抗

世界に大きな変化をもたらした1960年代から1970年代にかけての若者文化は完全に廃れ、消え去ったが、ロックやドラッグのカルチャーと違い、未だ現代に残されているものがある。
それはお酒だ。
日本は成熟社会になり、輸入されるお酒の種類も数を増し、家庭や飲食店での飲み方や楽しみ方も変化を重ねてきた。
お酒の文化だけは廃れることなく、今現在も世界中で進化を続けていると言ってもいいだろう。
「限りなく透明に近いブルー」に登場する若者は、ドラッグやロックの力で大人社会の管理に抵抗しようと必死にもがき続けているが、彼らの酒の飲み方も、現代の若者とは大きく異なっている。

限りなく透明に近いブルー 村上龍

タバコの喫いすぎで舌がヒリヒリする。
ワインの酸味が乾いた喉を締め付ける
おい、もっと甘いワインないのか?
ケイはヌードモデルの仕事で秋田まで行った話をニブロールで酔った眠そうな顔のカズオに話している。ウイスキーをラッパ飲みしてはピーナツを一口ずつ口に放り投げて、あたい舞台の上で縛られたのよ、ひどい仕事だったわ、ねえカズオ、ザラザラした縄でよ、縛られたのよ。

カウンターにズルズルと寄りかかりながら倒れそうになるのをケイが支え、口移しにウイスキーを流し込む。
ケイはベトベトした油臭い口紅を塗っている。口紅の味が混じったウイスキーが喉を焼きながら入っていく
この野郎!止めろ、止めんか、ヨシヤマが読んでいた少年マガジンを床に叩きつけて怒鳴った。
ケイ、お前リュウとなら舌吸うのか?
歩きだしてよろけ、テーブルを倒す、グラスが音をたてて割れ、ビールが泡を吹きピーナツが床を転がる。

限りなく透明に近いブルーに見る若者と酒文化 閉塞された世の中を変えるには?

「限りなく透明に近いブルー」に登場する彼らと現代の若者たちとの大きな違いは、「お酒を楽しんでいない」ということである。
作中ではとにかく憂鬱な空気だけが流れる。
ドラッグをやってドライブに出かけても幻覚で苦しそうにしているし、トイレでガードマンをボコボコにしても誰も歓声をあげたりしないし、お酒を一気飲みした後、大声をだして自分を誇示することも、必死に場を盛り上げようとすることもない。
ただひたすら悪いことだけを選び、酒やドラッグやファックで自分を限界まで消費し続けている。
無理に楽しんだり、盛り上がろうとしたりするのではなく、ただ淡々と消費を続けるのだ。
それは、彼らが他の誰かの手によって消費されることを拒否し、自分の意志だけで自分を消費させることを選んだ、大人たちへの抵抗の証なのである。

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