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イタリアの価値観「ドルチェ・ファル・ニエンテ」に教わる日常生活の送り方

子どもから大人まで誰もが愛するあの料理がわたしのソウルフード

わたしのソウルフードはおにぎりだ。そのルーツは幼少時代まで遡る。父が仕事で忙しかったせいもあって、当時のわたしは異常な程のお母さん子だった。父に対する認識は「たまに家にいる知らないおじさん」。

そんな関係なのに、突如母が短い間で入院することになり、夜は父と二人きりでご飯を食べるという状況になった。父と二人、何を話せばいいかもわからない。

父はそんな私の心を開こうと、毎日いろんなレストランや食堂に連れて行ってくれた。なかでも一番印象に残ったのが、「かにや」という長崎にあるおにぎりの専門店である。

白米はとても柔らかく、ほのかに湯気がたっていて、具材はうめ、しゃけ、昆布などのスタンダードなものから、塩さば、きゃらぶき、牛すじの甘辛煮…など本格的なものまで。シンプルで、かつ温かみのある柔かいおにぎりは、当時2歳だったわたしでもぺろりと食べてしまうほど。母の作ってくれるおにぎりを忘れるくらい、そして母自身を忘れてしまうくらい、そのときは目の前のおにぎりに夢中になれた。

普段お出かけしない街中の広いお店と、優しい父と、子どもサイズの小さいおにぎりと。食べることがわたしと父を繋いでくれたのだ。

この出来事がきっかけでわたしのソウルフードはおにぎりになり、それは大人になった今でも変わらない。

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食べることは快楽。おにぎりでもピザでも、好きなものを食べられる「歓び」は同じ

エリサベス・ギルバートのベストセラー小説を映画化したヒューマンドラマ「食べて、祈って、恋をして」は、人生に迷った一人の女性の生き樣を描いた、じつに綺麗な映画だ。

ジュリア・ロバーツ演じる主人公リズは、離婚や失恋を経験し、苦悩を経たのち、慌ただしく時間が流れるニューヨークでの生活を捨て、旅に出る。

最初に訪れる場所は、ヨーロッパ屈指の美しい国、イタリア。
伝統的な美味しい料理を味わいながら、イタリア人と交友関係を築いていくリズは、イタリア人から「快楽」とはどういうものかを学ぶ。

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©Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

Dolce far niente. ドルチェ・ファル・ニエンテ

ローマ人、ルカがリズに問う。

「快楽は人間の当然の権利なのに、なぜ楽しまないんだ?」

「アメリカには娯楽があっても、快楽はない。
毎日朝から晩まで働いて、楽しむことを罪だと思っている。だから週末はパジャマをきて家でテレビを見るだけで終わってしまうんだ」

イタリアにはこういう言葉がある。

Dolce far niente. ドルチェ・ファル・ニエンテ―“何もしない歓び“

このイタリア語は、イタリア人の価値観をそのまま表しているといえる。やりたいことをやって、行きたいところに行って、そして、食べたいものを食べたいだけ食べる。パスタ、ピザ、ワイン…食の宝庫と呼ばれるほど、美味しいものがたくさんあるイタリアでは「食」こそが彼らの歓び。「食」が、快楽を人生の最優先とした「ドルチェ・ファル・ニエンテ」という価値観の源となっているのだ。

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©Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc.

食べることを楽しんでいた頃をもう一度思い出し、食という快楽を楽しむ生き方へ

何もかもが忙しくめぐる日本は、ローマ人ルカが言うニューヨークの生活とほとんど同じ状況だ。毎日無理な仕事に追われているため、時間がない時にでも簡単にすませられるファーストフードやコンビニ弁当が人気になっている。 食べることが快楽や愛情だったころのことを忘れてはいないだろうか?

日本食は見た目も味も本当に素晴らしい。ユネスコ無形文化遺産に登録された料理が身近にある中で生活をしているわたしたちは、非常に恵まれている。つまり “ドルチェ・ファル・ニエンテ”という生き方を飾るに充分な、快楽に満ちた食べ物で溢れているのだ。

仕事で充実するのは大事だが、今一度思い出してみるのはどうだろう。あの店のあのおにぎりが食べたい…あの店のパスタやピザが食べたい…ふとした時の、その思い。

仕事を忘れて、一休みして、ベンチに座って青空を眺めながら、あなたの片手にはどんな美味しいものがあるだろうか。

Written by Hikari

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