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JCの朝食は、“試食“ de ハードボイルド!

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男でも女でも関係ない。試食を堂々とやってのけてこそ真のハード・ボイルドだ

楽だし、安いし、栄養も取れるし、毎朝シリアルですませているという人は少なくないのかもしれない。ちっちゃな頃から悪ガキで、15でワイルドと呼ばれた筆者は、朝は断然白米派。シリアルなんか別に興味はないのだが、『試食用』だったらもちろん食べたい。だって、試食って無料だろ?ハード・ボイルドの匂いがするじゃないか。

あの超有名ベストセラー、綿矢りさ『蹴りたい背中』」での強烈なワンシーンをご存知だろうか。

蹴りたい背中』綿矢りさ (河出文庫)

主人公のハツはちょっと変わったわんぱく高校生。オシャレとか流行とかクラスのみんなの会話とか、キラキラしたものには一切ついていけず(というかむしろ忌み嫌う)、それでも何かに対する「欲」だけは人一倍強い。(そしていじ汚い。笑)そんなハツが中学一年生の夏休み。部活の練習試合の前に必ずMUJIカフェに運動靴で通う、彼女の行動を紹介させて頂こう。

…さわやかなBGMの流れている、白と黒と麻色の雑貨で統一された店内を、中学校のネーム入り試合用赤短パンにTシャツ、バレーボールが四個入っている細長いスポーツバッグを肩にかついで歩いていった。

私は何も買うつもりはなかった。ただ朝食を摂りたいだけ。コーヒーのいい匂いが漂うMUJIカフェを通り抜け、いつもの場所を目指す。

その『いつもの場所』というのが、問題のコーンフレーク売り場である。

コーンフレーク

…大きなコーンフレーク売り場には、それぞれ違う種類のコーンフレークが詰めてあるタンクが、ずらりと並んでいた。(中略)私が狙うのは、タンクの下に置いてある、白い小皿に盛られた試食用のコーンフレーク。ザラっと手でつかんで食べ、全種類制覇を目指して、小皿の中の半分ぐらいを食べたら、次の種類へ行く。

その中でも、甘くて軽いシンプルな味の、生成り砂糖のコーンフレークが一番好き。あとレーズンの混ざったコーンフレークもおいしい。手で掬(すく)って口まで持って行って食べた。この試食が、私の朝ごはん。

…って、こんなワイルドな朝ごはんの摂り方があるだろうか?!もう一度確認する。ここは決してデパ地下の試食などではない。(デパ地下の試食などで満足する奴はハードボイルドの風上にも置けない。)あのオシャレの金字塔、コーヒーの香り漂う『MUJIカフェ』なのだ。

そんなワイルドなハツだが、食べていると当然こんな目にもあう。

その時、どこかに視線を感じた。コーンフレークで口を膨らませたまま辺りを見回すと、MUJIカフェのエリアにいる客が、こちらを見て、笑っているのを見つけた。ガラス張りの向こうで、女一人と男一人がテーブルを囲んで座っていて、テーブルを囲んで座っていて、私の方を眺めて、あけっぴろげに笑っている。何、あのいじ汚い子!とか言いながら笑っているのかもしれない。

もしそうだとしても、やめる気はない、まだコーンフレークを二種類食べきれていないもの。私は彼らから見えないように棚のかげに隠れ、ラストスパートでコーンフレークを口に詰め込む。

…たった中学一年生の小娘が、なんてかっこいいのだろうか。これこそまさに、自分の欲に正直に生きる、ダサいことはしない、己を貫く、真のハード・ボイルドなのだ。

でもね、実際にやっちゃうと、「背中を蹴られる」どころか「出入り禁止」になっちゃうから気をつけてね。

ああ、ハードボイルドは辛いよ…。

Written by ヤマダリョウ

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