ヤミー!-自己満足 食・文化メディア | ヤミー!(yummy!)は、おいしいが一気に読めちゃう飯テロWEBマガジン!

JCの朝食は、“試食“ de ハードボイルド!

男でも女でも関係ない。試食を堂々とやってのけてこそ真のハード・ボイルドだ

楽だし、安いし、栄養も取れるし、毎朝シリアルですませているという人は少なくないのかもしれない。ちっちゃな頃から悪ガキで、15でワイルドと呼ばれた筆者は、朝は断然白米派。シリアルなんか別に興味はないのだが、『試食用』だったらもちろん食べたい。だって、試食って無料だろ?ハード・ボイルドの匂いがするじゃないか。

あの超有名ベストセラー、綿矢りさ『蹴りたい背中』」での強烈なワンシーンをご存知だろうか。

蹴りたい背中』綿矢りさ (河出文庫)

主人公のハツはちょっと変わったわんぱく高校生。オシャレとか流行とかクラスのみんなの会話とか、キラキラしたものには一切ついていけず(というかむしろ忌み嫌う)、それでも何かに対する「欲」だけは人一倍強い。(そしていじ汚い。笑)そんなハツが中学一年生の夏休み。部活の練習試合の前に必ずMUJIカフェに運動靴で通う、彼女の行動を紹介させて頂こう。

…さわやかなBGMの流れている、白と黒と麻色の雑貨で統一された店内を、中学校のネーム入り試合用赤短パンにTシャツ、バレーボールが四個入っている細長いスポーツバッグを肩にかついで歩いていった。

私は何も買うつもりはなかった。ただ朝食を摂りたいだけ。コーヒーのいい匂いが漂うMUJIカフェを通り抜け、いつもの場所を目指す。

その『いつもの場所』というのが、問題のコーンフレーク売り場である。

コーンフレーク

…大きなコーンフレーク売り場には、それぞれ違う種類のコーンフレークが詰めてあるタンクが、ずらりと並んでいた。(中略)私が狙うのは、タンクの下に置いてある、白い小皿に盛られた試食用のコーンフレーク。ザラっと手でつかんで食べ、全種類制覇を目指して、小皿の中の半分ぐらいを食べたら、次の種類へ行く。

その中でも、甘くて軽いシンプルな味の、生成り砂糖のコーンフレークが一番好き。あとレーズンの混ざったコーンフレークもおいしい。手で掬(すく)って口まで持って行って食べた。この試食が、私の朝ごはん。

…って、こんなワイルドな朝ごはんの摂り方があるだろうか?!もう一度確認する。ここは決してデパ地下の試食などではない。(デパ地下の試食などで満足する奴はハードボイルドの風上にも置けない。)あのオシャレの金字塔、コーヒーの香り漂う『MUJIカフェ』なのだ。

そんなワイルドなハツだが、食べていると当然こんな目にもあう。

その時、どこかに視線を感じた。コーンフレークで口を膨らませたまま辺りを見回すと、MUJIカフェのエリアにいる客が、こちらを見て、笑っているのを見つけた。ガラス張りの向こうで、女一人と男一人がテーブルを囲んで座っていて、テーブルを囲んで座っていて、私の方を眺めて、あけっぴろげに笑っている。何、あのいじ汚い子!とか言いながら笑っているのかもしれない。

もしそうだとしても、やめる気はない、まだコーンフレークを二種類食べきれていないもの。私は彼らから見えないように棚のかげに隠れ、ラストスパートでコーンフレークを口に詰め込む。

…たった中学一年生の小娘が、なんてかっこいいのだろうか。これこそまさに、自分の欲に正直に生きる、ダサいことはしない、己を貫く、真のハード・ボイルドなのだ。

でもね、実際にやっちゃうと、「背中を蹴られる」どころか「出入り禁止」になっちゃうから気をつけてね。

ああ、ハードボイルドは辛いよ…。

Written by ヤマダリョウ

このライターの他の記事はこちらから!

関連記事

【ストレス解消】食べるだけで幸せになれる食事!?【活力UP!】

人間にとって一番大切な栄養素とはなんでしょう?

ビタミン、カルシウム、ミネラル…?

正直なところ、どれが欠けても人は健康的に生きていくことは出来ません。

そんな身体に必要不可欠な栄養素のほかに、とても大事で見落とされがちなものが1つあります。

それは心の栄養です。

 

いくら人間、カラダが健康でも気持ちが沈んだりイライラしたり無気力なままでいてはとても幸せとは言えません。

日々を活力的に過ごし自分の身の回りへの感謝を忘れず人生を楽しむ。

これが人間にとって一番大切なことだと私は思います。

 

慌ただしい生活の中で私もそのことをつい忘れてしまいます。

そんな疲れて荒みがちな気持ちになった気持ちを前向きにして

心のエネルギーを補充してくれる栄養素、それがトリプトファンです。

001

 

 

トリプトファンを摂取すると脳内で幸せを感じるホルモンが生成されると言われています。

アドレナリンやドーパミンと並んで人間の感情をコントロールする大切な神経伝達物質です。

またトリプトファンは快活な睡眠を促すメラトニンも同時に生成してくれます。

 

過去に当ブログで豊臣秀吉がトリプトファンを積極的に摂取していたからこそ

いつもニコニコして「人たらし」としての才能を発揮し天下を手中に収めたことは紹介させていただきました。

 

【シリーズ戦国武将】信長、秀吉、家康に学ぶ現代を生き抜くためのサバイバル戦国飯

 

 

活力や笑顔、前向きな気持ちがあれば仕事も趣味もプライベートも充実するという好例だと思います。

002↑いつでも笑顔で明るい生活を送りたいですね

 

そんなトリプトファンが含まれている食材は豆腐、納豆、味噌などの大豆製品、

チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、米などの穀物、ゴマ、ピーナツ、卵、バナナにも多く含まれています。

 

お気づきだと思いますが、意図的に摂ろうとせずとも健康的な食事を心がければトリプトファンは充分に摂取することができます。

 

ただし、セロトニンは日中に分泌されるので出来れば朝に食事を行う必要があります。

そう、忙しかったり寝不足だとつい朝食を抜かしてしまいがちですが

忙しいときこそきちんと朝食を食べる、これがストレスから解放される効果的な手段だったりします。

 

ご飯にお味噌汁、目玉焼き、焼き魚…そんなありふれた朝食を規則正しく摂取する。

それが健康的な食事が人生を豊かに、幸せなものに変えてくれます。

 

003

 

それにしてもこうして振り返ってみると日本の朝食スタイルは、

月日を重ねて作られた食文化なだけあって必要な栄養素を十分に摂取できるようよく考えられているものだな、と感心してしまいます。

なので私もこれからは出来るだけ朝食を抜かさないよう気を付けたいと思います。

Written by tori

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

クリスマスっていいことばかり。…本当にそう?

皆さんもう今年のクリスマスの過ごし方は決められただろうか?
恋人と過ごす方は、そろそろレストランを予約しないと、人気店は次から次に埋まってしまう頃かも。ワインやシャンパンを飲むのもよし、ターキーピザを買って帰ってクリスマスツリーイルミネーションで飾り付けたお家で過ごすのもよし。もちろんケーキプレゼントだって忘れずに。
今年もロマンチックな夜になること間違いなし…クリスマスってなんて素敵な一日なんだろう…そう思っているあなた、楽しみが膨らみすぎて、油断してはいないだろうか?忘れてはいけない。あなたがワインやターキーを食べて幸せな気分になっている間、世の中には不幸なクリスマスを送る人だっている、ということを。

強盗に襲われるまさかの「バッド・クリスマス」!

60~70年代のロックの王道、キンクス/Kinksの、ファーザークリスマス(Father Christmas)という曲がある。この曲の特徴は、ボーカル(主人公)の経験談が一つのストーリーとして、歌の中で語られることだ。
「ファーザー・クリスマス」とは、デパートなどにいるサンタの格好をしたおじさんのこと。日本でもデパートで、子どもたちにプレゼントを配っているおじさんを見かけるが、この曲は主人公がデパートで「ファーザー・クリスマス」となった時に起きた、ある事件の話が語られている。
クリスマスらしい綺麗な鈴の音の前奏で始まる、主人公の不幸なクリスマス・ソングがこちら。

ガキの頃、俺はサンタクロースを信じていた
それが親父だって知ってたけどね
クリスマスになったら靴下を吊るして
プレゼントを開けて喜んだものさ

だが前回、俺がサンタの格好をしていた時
俺はデパートの外に立っていて
子どもの強盗がやってきて、俺を襲ったんだ
そして、俺のトナカイを床に叩きつけたんだ

サンタの格好をして子どもを喜ばせるつもりが、子どもの強盗に襲われてしまうなんて、物騒すぎて、日本ではなかなか考えられない。主人公自身の幼少期の体験より、ずいぶん不幸で過激なクリスマスである。私たちだって、恋人と幸せなクリスマスを過ごすことばかりを考えて気を抜いていると、案外こういう目にあうことだってあるかもしれない。

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

ところでこの歌に登場する強盗というのが、子どもとはいえ相当怖いのだ。

おいサンタ、いくらか金をよこせ
そんなおもちゃでごまかせると思うなよ
もし金をやらないっていうんなら、ただじゃすまないぜ
イライラさせるな!俺はお前のパン代がもらえればいいんだ
おもちゃなんか、ぜんぶ金持ちのガキにくれてやればいいんだよ

俺の弟にスティーブ・オースティン(※米国のプロレスラー)のコスチュームなんかやるな
妹に可愛いぬいぐるみなんかやるな
俺たちはジグソーパズルやゲームの中のお金なんか望んでないんだよ
俺たちが欲しいのは、おもちゃじゃない
本物の金なんだ

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

まだ子どもだというのに、おもちゃなんかいらない!金をよこせ!
と、堂々と言い張っているのである。
こんな子どもの強盗に襲われては、せっかくのクリスマス、美味しいものを食べる元気すらなくなってしまいそうだ。子どもたちに夢を与えるのがクリスマスのはずなのに…

だが、視点を変えてみると、私たちが呑気に幸せなクリスマスを妄想している間に、実はこの子どもたちは必死の想いで、クリスマスを生き延びようとしていることがわかる。

ワインを飲む前、ターキーをかじる前に、貧しい子どもたちのことを考えてみよう

子どもの強盗の意外な一面があかされるのは、曲の中盤を過ぎてからのことである。

おいサンタ、いくらか金をよこせ
そんなおもちゃでごまかせると思うなよ

でも、俺の親父には仕事をあげて欲しいんだ
親父はたくさんの人を喰わせていかなきゃいけない
だがそれが無理だっていうなら、俺はマシンガンを持つぜ
そしたらこの通りのガキを全員震え上がらせることができるんだ

おいサンタ、いくらか金をよこせ!
そんなおもちゃでごまかせると思うなよ!
もし金をやらないっていうんなら、ただじゃすまないぜ
イライラさせるな!俺はお前のパン代がもらえればいいんだ
おもちゃなんか、ぜんぶ金持ちのガキにくれてやればいいんだよ

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

わかりいただけただろうか?子どもたちは決して、ひねくれているのではない。
明日がどうなるかわからない子どもたちにとっては、
おもちゃは「生きていくのに必要ないもの」なのである。
お金がない父親に対して、子どもはおもちゃを欲しがったりするだろうか?
むしろ、それこそひねくれ者だ。
お金がない父親に対して、なんとか仕事を与えてあげようという切実な想いと、
プレゼントをくれる余裕があるんだったら、現金をくれよ!
おもちゃなんか食べられないよ!誰のことも助けてあげられないよ!
という率直な想いを持てるのは、素直な子どもだからである。

そしてKinksは最後にこう言って、歌を締めくくる。

メリー・クリスマス
楽しい楽しい夜を過ごせよ
でも、貧しい子どもたちがいることを忘れないで
あなたがワインを飲んでいる今、その間にもね

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

…ワインを飲みながら、貧しい子どもたちのことを考えられる人がどれだけいるだろうか?
もちろん、だからといってワインを飲むのを自粛したり、子どもにプレゼントをあげるのをやめたりする必要はないだろう。
だが、ワインを飲めるのも、ケーキを食べられるのも、恋人と過ごせるのも、子どもにプレゼントをあげられるのも、あなたが今健康で、働けていて、お金を持っているから。それがこの世でどんなに素晴らしいことか、実感して、感謝して、じゅうぶんにクリスマスを楽しんでほしいと私は思う。そうすれば、ワインの味もケーキの味もターキーの味も、より一層美味しいものになるだろう。
毎年訪れるクリスマスだからこそ、忘れてはいけないことがある。今年のクリスマスは、家族と、友人と、恋人と、そのことを今一度確認してみてはいかがだろうか?
きっと、素晴らしい夜になるはずです。

クリスマスのワイン、ターキー、ケーキ…の前に聴くべき70年代ロックの名曲

Written by ヤマダリョウ

このライターの他の記事はこちらから!

限りなく透明に近いブルーに見る若者と酒文化 閉塞された世の中を変えるには?

40年経った今、優れた若者の文化は残されているのか?

作家の村上龍が「限りなく透明に近いブルー」で酒とドラッグとファックに明け暮れる若者を描き芥川賞をとってから、今年でちょうど40年になる。
文学の歴史を一変させた問題作は、40年経った今でも当時の若者文化の象徴として国内にとどまらず海外でも広く愛されてやまない。
若者たちが大音量でロック・ミュージックを聞きながらドラッグをやったり、酒を飲みながら黒人たちと乱痴気騒ぎをしたりと、過激で暴力的な描写が多いのが本作の特徴だが、その世界から40年という年月が経ち、若者の文化は大きく変化した
輝かしいクラシック・ロックはとうの昔に消え去り、ドラッグは完全な禁忌として陳腐化し、ファックはパソコンやスマートフォンで乱交だろうが黒人だろうが子どもでも簡単に見られるものになった。
「限りなく透明に近いブルー」の世界のような、多数の大人が支配する社会やエスタブリッシュメントを脅かす若者文化は、現代に残されているだろうか。
ITなどの先端技術で成功する若者が限られたマイノリティになってしまった現代では、若者のバックボーンとなりうる優れた文化はもはや残されていないと言っても過言ではないだろう。

限りなく透明に近いブルー 村上龍

ずっと立場の弱いままの若者たち

寄ってたかってバイクで夜の街を暴走したり、教室のガラス窓を割って回ったり、居酒屋でバカ騒ぎしたりしても、大人の社会には何の影響を与えることもない。
社会的には立場の弱い若者にとって、完成された大人社会の制圧と管理から逃れ、革新的なムーブメントを起こし、世界に変化をもたらす、という点においては、ビートルズやローリング・ストーンズに代表される文学的なインテリジェンスに溢れた詩と体を内側から震わせる美しい音を持つクラシック・ロックの存在は大きかった。
大人社会を揺るがすほどの強いエネルギーと知的さを兼ね備えている若者文化はもう残されていないどころか、最近は暴走族もほとんど絶滅状態で、血の気の多い若者すら見かけることが少なくなった。
社会的に立場の弱い若者は、アイドルに夢中になったり、スマホゲームに夢中になったりして、大人になってもずっと立場の弱いままだ。

限りなく透明に近いブルーに見る若者と酒文化 閉塞された世の中を変えるには?

インパクトありすぎ!長崎銘菓「こいがし」のハードボイルドな実態を調査!

甘ーい恋菓子かと思った?

「恋菓子」と聞くと、あなたはどういうものを思い浮かべるだろう?ハートの形をしたクッキー、いちごクリームのたっぷり詰まったマカロン、ちょっぴり苦味のきいたチョコレート、などなど。「恋するフォーチューンクッキー」と歌にあるように、恋愛×菓子とはよくいった組み合わせで、要するに「恋菓子」とは胸がドキドキする恋愛のような魅力が詰まったお菓子、というところだろう。

いずれにせよ、最近近所の小学生にエアガンを突きつけられても屈しなかったほどのハードボイルドな私には、軟派な「恋菓子」などはまったくもって無縁の食べ物である。

え?鯉菓子…?恋じゃなくて、鯉…?

初恋の味とか、食べたら恋がしたくなるとか、そんなキャッチコピーとともに世の中に無数に出回っている「恋菓子」。では長崎銘菓の「鯉菓子」はどうだろう?

鯉菓子…?

菓子×魚、…なんとなく、薄ーいせんべいの表面に水彩画みたいに鯉の泳ぐ姿が描かれていて、一口食べたらパリッと小気味のいい音が聞こえてくるような、そんな昔ながらの和菓子のことなんじゃないの…?と、予想したそこのあなた。それは大きな間違いだ。

板チョコは瓦のように重ねてチョップで割って食べる、ポッキーやプリッツは必ず20本ほど束ねてから一気に食べる、というお菓子の食べ方一つでもハードボイルドを貫いてきた私だが、さすがにこの「鯉菓子」を最初に見た時は、度肝を抜かれた。

ご覧いただこう。これがその、「鯉菓子」である。

koigasi_01

気持ち悪い。

ちょっと気持ち悪すぎはしないだろうか。もちろん批判しているわけではない。ただ、ちょっとだけ見た目に問題があるような気がするのだ。だってこれは菓子×魚などではない。これはもう魚だ。まんま魚。名前だけを聞いて、甘ーい恋菓子と勘違いした世の中の女子が、そのギャップに気絶しかねないほどの強烈な見た目である。

koigasi_02

私は変わった見た目のやつは大好きだが、ドン引きしている人を安心させる為にも、ここで一応説明をしておく。この鯉菓子は、端午の節句の時期になると長崎県内で流通する、長崎の伝統的な銘菓の一つである。「こどもに強く、自由に育ってほしい」という意味が込められている鯉のぼりにちなんで、子どもに親しまれるお菓子として鯉の姿をした和菓子が、長崎の各和菓子専門店によって作られているのだ。

koigasi_03

だがよくこの鯉をみてほしい。子どもに親しまれるというよりは、どちらかというと嫌われ者の顔をしていないか。人をからかっているかのような丸い瞳、おしゃべり上手にみえる大きく開いた口、かすかに黒を纏ったその姿、どう考えてもこいつは悪役ハードボイルドだ。私は大好きだが、子どもにはこの大人の渋さがわからないだろう。

鯉菓子、実食

見た目はいかにも曲者で食えないやつだが、この鯉菓子は食べられる。どうやって食べればいいのかわからないので、とりあえず包丁で切り込みをいれてみることにした。

koigasi_04

はみ出てきた。

予想以上にじんわりはみ出てきた。中の黒あんがゆっくりとはみ出てきて、ハードボイルドな私でも思わず「ひっ」と声を上げてしまった。

koigasi_05

今一度確認するが、これはお菓子である。

焼き魚でも、肉厚なステーキを食べているのでもない。お菓子を食べているのだ。食べながらこんなにお菓子を食べていると実感できないお菓子が世の中に存在するだろうか。長崎名物恐ろしや…

見た目ばっかり気にして、恋愛にうつつを抜かしている世間の七夕男も、この鯉菓子を見習ってハードボイルドに生きてほしい。

でも、さすがにちょっとは見た目にも気を使おうね…

Written by ヤマダリョウ

このライターの他の記事はこちらから!

タフな男のワイルドな料理はホット・ケーキ de ハードボイルド!

ハードボイルドでタフな男が愛するホット・ケーキはコーラが決め手

私は運動会のパン食い競争で、いちごジャムをポケットに忍ばせていたことがある。スタートと同時にパンめがけて全力疾走。おもむろにジャム瓶を取り出し、吊ってあるパンにベタベタ。…だって、早くゴールするよりも、あのパンをできるだけ美味しく食べたほうが幸せじゃないか!

そんな生まれながらの超ひねくれ者ならきっとわかってくれるハズ…ってのがこの「ハードボイルド・ホット・ケーキ」。村上春樹のあの有名な処女作、『風の歌を聴け』の登場人物「鼠」は、ハードボイルドを地でいくタフな男だ。

風の歌を聴け』 村上 春樹(講談社文庫)

鼠の好物は焼きたてのホット・ケーキである。彼はそれを深い皿に何枚か重ね、ナイフできちんと4つに切り、その上にコカ・コーラを1瓶注ぎかける。

コ…コカ・コーラを1瓶注ぎかける?!

だって、アッツアツのホット・ケーキに合う美味しいものといえば相場は決まっている。はちみつ、シロップ、溶かしたバター…

でもそれってさ、「美味しさ」で競った場合の話だろ?鼠が求めているのは美味しさなんかじゃない。ホット・ケーキだろうがなんだろうが、なによりも重要なのは「ワイルドな見た目」と「効率の良さ」なのだ。

この食い物のすぐれた点は、

食事と飲み物が一体化していることだ。

作中で鼠は“5月のやわらかな日ざしの下にテーブルを持ち出して“、その奇妙な食物「焼きたてホット・ケーキのコーラ1瓶ぶっかけ」を頬張るのだ。なんてワイルドな男で、そしてなんてハードボイルドな料理だろう。(というかもはや、料理と呼んでいいのだろうか…?)

「生まれてから今まで自動販売機のボタンはぜんぶ頭突きで押してきた」
「レンタルショップでDVDを借りて、店を出て行くときにそのまま返却BOXに借りたものを全部ブチ込む」

など、数々のハードボイルド伝説を打ち立ててきた筆者は、もちろんこの料理も実際に作ってみることにした。熱々のホット・ケーキにコカ・コーラを1瓶注ぎかけるなんて、ハードボイルド界では初心者レベル、むしろ「え?まだやったことなかったの?」というぐらいの難易度である。

まずは四つに切る。

だって”「ナイフできちんと四つに切り…」”って説明があったからね。あくまで原作に忠実に。大切なのは、必ず「深い皿」を準備すること。コーラを一瓶注ぎきれないからね。

hotcake_01

深い皿に乗せたら…

さあいくぞ!?やるぞ!?いいのか本当に?!瓶のコーラとか手に入れるの結構苦労したぞ!?このまま飲まなくていいのか本当に!やめるなら今だぞ!!

いけええええええー!!

いけええええーー!!!泡が立つぐらいドバーッと!ジュワーーって音がするほどかけると気持ちがいいぞ!ホット・ケーキが一つ台無しになったと思うと気が滅入るぞ!!

hotcake_03

※決して躊躇しないこと。

興奮冷めやらぬうちに、一気に食すべし。

抵抗する体にムチ打って、とにかく一気に食すべし。無理やり口に押し込んで、顔をしかめて食べてみて。肉汁ならぬ、「コーラ汁」が、ふくらんだホット・ケーキから滲むから…

hotcake_04

そして冷たい涙が頬をつたうから…

完食。

見事に完食しました!味はなんていうか、クソマズかったです!

hotcake_05

こちらが食後の容器の写真。

どうだい?こうしてみると、まるで醤油ラーメンを食べたあとにでも見えてくるからコイツは摩訶不思議だ。「ハードボイルド・ホット・ケーキ」は、そのワイルドな見た目や食べ方だけではなく、食後、容器に溜まったコーラですら、ささやかな哀愁を与えてくれるのだ。

…いかがだっただろうか?

あちこちから笑い声、怒声、ヤジがとんできそうだが、筆者は誰よりもこのホット・ケーキを愛している。なぜかって?答えは簡単。”食事と飲み物が一体化している”からさ。ハードボイルドであることに、理由なんていらないんだよ。

村上春樹は処女作であるこの「風の歌を聴け」のハードボイルドな世界観の中で、こう言っている。

僕は・君たちが・すきだ。

愛があればいいのさ。みんな、短い人生でせめて一度ぐらいは、ハードボイルドに生きてみようぜ。

でもね、間違ってもこのホット・ケーキ、人に作ってあげるのは やめた方がいいですよ…。

Written by ヤマダリョウ

このライターの他の記事はこちらから!

ロサンゼルスの夜食はキャットフード de ハードボイルド!

”ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男”が作ったハードボイルド映画

「ロング・グッドバイ」というエリオット・グールド主演のハード・ボイルド探偵の原点的な映画がある。監督のロバート・アルトマンは「ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」と言われている。

風変わりな嫌われ者の方が、私は好きだ。いつだって、みんなと同じことを嫌う「カリスマ」が世界を変えてきたし、そういう男こそハード・ボイルドじゃないか。

この映画の音楽はハリー・ポッターとスター・ウォーズのあのテーマを作曲したジョン・ウイリアムズ。オープニングのけだるいBGMとともに、深夜のロサンゼルス、ネオンの街並み、美しいハイウェイが映ると、もう気分は自由気ままな私立探偵。

猫と女とハードボイルドとキャットフード

この映画で紹介したいのは「キャットフード」、である。

「食×映画」だとか「みなさまの『自己満食』を応援する」だとかなんだとか言いながら、キャットフード。食べてもないのに、どうやってヤミつきになるか分かるんだよ!と思われそうだが、

想像するんだよ。

それがハード・ボイルドの、ハード・ボイルドたる所以なのである(食べるのはさすがに無理です)。

主人公の私立探偵・フィリップ・マーロウはネコを飼っている。深夜3時、飼いネコに「ねえねえ、ご飯作ってよ!」とムリヤリ起こされるところから、この物語は始まる。

マーロウはべッドに寝てはいるが、靴は履いたまま、スーツのまま着替えもせずに髪はボサボサ。眠たい目をこすりながらキッチンに入り、キャットフードの入った缶を漁るも、ちょうどきらしてしまっていることに気づく。そこで仕方なく、卵とヨーグルトと調味料を皿にかき混ぜて、その場しのぎのご飯を作ってあげる。(こうやって結構ごまかしちゃうよね)だけど、美食家のネコは知らんぷり。こんなの食えるか!とでも言わんばかりに、皿を床へヒックリ返してすっかり拗ねてしまう。

しぶしぶネクタイを締め直し、近くのスーパーへと向かうマーロウ。キャットフードを求め歩く、深夜のロサンゼルスが美しい。まるで街じゅうのネオンが監督ロバート・アルトマンに味方しているかのよう。

…深夜のコンビニへの道中ってわくわくするけど、コンビニまでの道がこんなに美しかったらなあ…。

マーロウは深夜のスーパーマーケットを練り歩き、キャットフードの缶詰がある陳列棚まで歩くが、愛猫のお気に入り、「カレー印のキャットフード」だけがない。すかさず通りがかった店員に声を飛ばす。

「ヘイ!カレー印のキャットフードはないのかい?」

「…ありませんよ、こっちはどうです?こっちだってたいして変わらない」

「ダメだよそれじゃあ、あんたネコ飼ったことないだろ?」

「うん、ないよ、だって女のほうがいいもん。」

おお、その通りだな…、と言い負かされるマーロウの仕草がなんとも愉快。

結局いつもとは違うキャットフードを買って帰ったマーロウは、ネコにばれないように「カレー印のキャットフード」の空き缶に中身だけを移し替える。ほーらお前の大好物の、「カレー印のキャットフード」だぞ!とネコに差し出すも、匂いを嗅いだ瞬間一口も食べることなくネコに逃げられてしまう。え、そんなにカレー印のキャットフードがよかったの…?

longgoodbye

ネコを飼ったことのある人ならわかるけど、ネコってこだわり強いし、なんせプライドが高いからね…でもヨーグルトと生卵と調味料だけの料理を食べないのはわかるけど、他のキャットフードも一口も食べないなんて、この猫、なんともハード・ボイルドを貫いているじゃないか

原作では、このハード・ボイルド・ネコの登場はなかった。映画界の嫌われ者、ロバート・アルトマン監督のハード・ボイルドなスピリットが、きっとネコにまで乗り移ったに違いない。(もしかすると、監督の分身なのかも?)

それにしてもカレー印のキャットフード、きっとネコだけが知る特別なヤミつきフードなのだろう。

Written by ヤマダリョウ

このライターの他の記事はこちらから!

罪深き食材、生牡蠣に隠されたエロチシズム

料理で官能的な気分を味わったことはあるだろうか?

食べたことのない味で舌が震えた、極めて特殊な食感で全身に鳥肌が立った、耽美なルックスに喉が鳴った、独特な匂いに興奮し、思わず目の前で一緒に料理を食べている異性と過ごす今夜を思い描いた…

…生牡蠣はまさに官能的な食材の代表だ。

oyster
その海の恵みを口にするとき、私達はある種の緊張を感じてしまう。
生で食べられる機会が多いため、食あたりが多い食品であることは確かだが、牡蠣を食べるときの緊張は、そのような単なる衛生面への不安だけによらない。
罪の意識や、後ろめたさのような…牡蠣にはそういう特別な何かがある…一体その正体は何なのだろうか?

「…なんか全身が生牡蠣になったような感じだったんです」

そう表現してみせたのは、短編小説『フレッシュ・オイスター』を書いた、作家の村上龍である。作者の名作の一つ、『村上龍料理小説集』は、32の短編が集まった「料理小説」だ。

村上龍料理小説集』村上龍(講談社)

ストーリーで味わう料理の魅力

官能的な料理というものは、ただ美味しいというだけではなく、「出会い」という魅惑に包まれている。食の魅力は必ずしも味だけではない。いくら素晴らしい味だとしても、一人寂しく孤独に食べることには、実はあまり意味がない。神秘的な野生の食材を使用して恐ろしいほどに作り込まれた貴重な料理を前に、時間を共にする相手との特別な夜。遠く離れた外国の土地で、歴史と伝統を感じる料理に舌鼓をうって、文化の中枢に触れる知的な時間。人はそのストーリーの贅沢さに、秘密に、快感に、罪の意識さえ感じ、官能的な魅力を実感するのだ。
そのエロティックで背徳的な気分を短い時間で一気に楽しめてしまう、それが『村上龍料理小説集』の魅力なのだ。

小説の舞台や回想シーン、テーマになっている料理の種類は、32話の短編でそれぞれ異なっている。…マンハッタンのリトルイタリー、ラップランド地方やリオ・デジャネイロ、赤坂やオールド・デリーのダウンタウン…味わう料理は、「骨付き仔牛のカツ」・「トナカイの生レバー」・「豚の臓物入りフェジョアーダ」・「ふぐの白子」・「ヤギの脳味噌のカリー」など、内臓が騒ぎ出すような美食料理がさまざまだ。
中でも、先述した『フレッシュ・オイスター』には特に惹きつけられる。語り手の男性と、キャビンアテンダントの女性は、2ヶ月間に3度、偶然の出会いを繰り返す。そのはじまりが生牡蠣に関する出会いで、一度目はニューヨークのオイスター・バー、それからシンガポール、千葉、そして4度目がパリ、サン・ジェルマン大通りだ。

「セクシーだったわ、(中略)…生牡蠣のことを考えてたらあなたに会ったんです」

「…全身が生牡蠣になったような感じだったんです、そしたらあなたに会ったから、びっくりして、まだ心臓がドキドキしてます」

そう語る女性の艶かしいセリフに、エロチシズムを感じずにはいられない。「全身が生牡蠣になった感じ」、とは一体どういうことだろうか?男性のことを本能で肌が直接的に求めていたのかもしれないし、あるいは細胞が味と映像を記憶していて、思い出しているうちに頭の中が生牡蠣のように溶けていきそうになったのかもしれない。いずれにせよ、はっきりしていることは、「全身が生牡蠣になった感じ」、とは味わったものだけが知る、「食」だけがもたらす特権的な快楽だということである。 「全身が生牡蠣になった感じ」を味わいたい方、また相手に味わって欲しい方は、『村上龍料理小説集』を手にとって開いてみることをお勧めする。

「…罪を食うとオレたちは元気になる」

そう作中にもあるように、32の短編料理小説は、私たちの人生を間違いなく充実させてくれる。そして、世の中に渦巻く巨大な快楽の秘密を少しだけ、まるで耳元で囁くかのように、そっと教えてくれるのだ。

Written by ヤマダリョウ

このライターの他の記事はこちらから!

保護中: 『いつかティファニーで朝食を』30分でできるパン、つくってみた

このコンテンツはパスワードで保護されています。閲覧するには以下にパスワードを入力してください。

ページトップ