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【おいしい絵本】最高にしあわせなセリフ「きょうのごはんはなーに?」

きょうのごはん(加藤休ミ)

『きょうのごはん』加藤休ミ/偕成社

母の帰りを待ちながら

「きょうのごはんはなーに?」
なんてセリフ、ずいぶん声に出していません。だって大人になってからは、ごはんは自分で用意するもの。
こども時代、わが家は共働きだったので夕飯は遅めでした。夕方、弟とテレビの前でアニメを見ながら母の帰りを待ち、顔を見るなり言ったセリフが、これ。疲れて帰って来た母に、開口一番ごはんとは…屈託がないというか、こどもらしいというか。

まずは、ほっかほかのごはん

対する母の返事はいつも「ほっかほかのごはんと…おつけものと…」。献立をまだ考えていなかったのでしょう。「ごはん」に「ほっかほか」をつけて、おいしそうに聞えるような工夫が今思えばなんとも微笑ましいこと。
いざ食べるときに、セットしていたはずの炊飯器のスイッチがオンになっていなかったこともしばしば。今となっては笑い話ですが、あの頃は大げさに文句を言ったものでした。大人になった私は言いたい。ちょっとくらい手伝えよ!って。

夕方の商店街のシーンからはじまるこの絵本『きょうのごはん』。魚屋さん、肉屋さん、喫茶店などお店が並ぶ通りを人々が行き交う、ちょっと懐かしいような光景が描かれています。魚屋さんの店頭には「さんま祭り」の旗。お店のおじさんにすすめられて、さんまを3尾買っている女性がいます。季節は秋なのでしょう。

きょうのごはん(加藤休ミ)

『きょうのごはん』加藤休ミ/偕成社

脂ののった焼きさんまは、旬に一度は食べたいメニュー。でもコンロの片付けがめんどうです。あるとき読んだ小林カツ代先生の料理本に、フライパンでさんまを焼く方法が記されていました。お肉と同じように、途中でふたを閉めたり開けたりして焼けばいいだけ。その本には、「さんまがフライパンより長ければ半分に切ればいいのよ」なんてさらっと書かれていて、ずいぶんと気が楽になったものでした。

匂いまでしそうなクレヨン画

焼きさんまのお宅からはじまり、つぎつぎといろんな家庭の夕飯を(猫が)のぞいて歩くこの絵本。まるでヨネスケの「突撃!隣の晩ごはん」(1985年から2011年に放映されたテレビ番組のコーナー)みたいで楽しい。登場するメニューは、焼き魚、カレー、オムライスなど一般的な家庭料理で、どれもすごくおいしそうに描かれているのです。

作者の加藤休ミさんはクレヨン画を得意とする作家さん。この絵本もすべてクレヨンで描かれています。こんがり焼けたさんまの皮がぷくっとふくれた部分、ごろんごろんと切られた野菜が顔をのぞかせるカレールウ、オムライスのケチャップのツヤと卵の焼き色…。写真みたい、いや、写真以上に匂いや温度も伝わってきます。きっと食べることが大好きな絵描きさんなのでしょう。

きょうのごはん(加藤休ミ)

『きょうのごはん』加藤休ミ/偕成社

ふたたびかつてのわが家の話に戻ります。  仕事用のバッグを置いて、お茶でいっぷくしたあとで台所に立つ母。冷蔵庫の扉を開けて、材料を確認しているようすに気づいた私たちきょうだいの「きょうのごはんはなーに?」攻撃が再開します。

「ほっかほかごはん」のあとに続く、母の「お魚と、おひたしと…」や「ハンバーグと、スープと…」に、私たちは「やったあ」とか「え〜〜」とか好き勝手に反応するのでした。  なんでもない日常だと思っていたれど、なにも考えずに「きょうのごはんはなーに?」って言えるって、改めて、とてもしあわせなことなんだなあ。
学校に行って、遊んで帰って来て、テレビ見て、きょうのごはんが食べられる。そんな当たり前のようで、かけがえのない日々を、この絵本を読んで思い出してみませんか。

Written by obaya

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