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料理はセクシーであるべき?「デザートをあなた」にするためのヨロン丼

デザートはあなた ヨロン丼

私が地方の街に就職して一人暮らしをしていた20代の頃は、日本のバブル経済全盛期でした。地方で体感したバブルは都会ほど派手ではなかったとは思いますが、それでも勤務先の建物は、外国から取り寄せた大理石がふんだんに使われたエントランスホール、オフィスは天井が高く開放感があり、美術館顔負けの有名画家の絵画がたくさん飾られている、といったゴージャスさでした。
もちろん(?)バブル終焉とともにその会社も弾けてなくなってしまいましたが…。

デザートはあなた ヨロン丼

読むだけで自分も「いい女」になった気がするバブル時代の小説

出張も多い仕事だったため、移動中には文庫本の小説をよく読んでいました。当時は「いい女になるための修行」をしなければならないと思っていて、仕事も恋愛も楽しむカッコイイ女性が描かれている恋愛小説をたくさん読んだものでした。
当時の小説を今読み返してみると、登場するものや状況設定や登場人物のキャラクターには今の時代にはない勢い、豊かさ、余裕といった特徴があって、当時の社会全体の雰囲気を思い起こさせるものがあります。

デザートはあなた ヨロン丼

「料理はセクシーであるべき」と説く小説『デザートはあなた』

中でも印象に残っている小説、森瑤子著『デザートはあなた』には、おいしそうな料理がたくさん登場します。料理好きの大西俊介という男性が、女性のためにあれこれ料理を作るというストーリーなのですが、その料理というのが、レストランのような手の込んだオシャレなコースメニュー。彼曰く「料理はセクシーであるべき」なのだそうです。

俊介はいつも「デザートはその日食事に招いた女性」の予定で腕をふるい、「デザートは君」とのキザな口説き文句もサラッと言うのですが、いつもアクシデントがあってそううまくは行かない、というのがオチになっています。それでも、この小説を読んだせいで「料理を作れる男はセクシー」というイメージが私の中に刷り込まれてしまいました。
それは実生活にも影響し、俊介のように手作りディナーに招待してくれた男性のデザートになり結婚までしてしまった私…。私の人生は、ドラマや小説にしょっちゅう影響されています。。。

デザートはあなた ヨロン丼

「ヨロン丼」を作ってみたら絶品だった!

作中ではレシピも詳細に説明されています。設定がバブリーなこともあり、手に入りづらい食材や質の高い高級品が使われていて気軽に真似できるものは少ない中、実際に私も作ってみたことがあるのは「ヨロン丼」です。
俊介が料理の腕を振るおうとした女性宅が沖縄の与論島で、そこでありあわせの材料をかき集めて偶然できたのが「ヨロン丼」でした。詳しくはぜひ本を読んでみてください。この料理は、森瑤子さんの他の小説やエッセイなどにもよく登場していて、ファンの間ではすでに有名。オイルサーディン缶を使った、簡単でおいしい丼です。

デザートはあなた ヨロン丼

サーディンを缶のオイルごとフライパンにあけて火にかけ、温まったところで醤油をまわしかけて煮詰める。それをタレごと熱々のご飯にのせて刻んだあさつきと七味唐辛子をたっぷりふり、あればライムを絞って…という簡単レシピ。文句なしのおいしさです。
写真はトマトソース漬けのサーディンを使って作ったときのものですが、これもGoodです。
女性を家に呼んで腕をふるう際には、ぜひ作ってみてください!

Written by Nolly

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【海外ドラマ頻出料理】デス妻・ブリーとリネット、対極な2人の対極なミートローフ

【海外ドラマ頻出料理】デス妻・ブリーとリネット、対極な2人の対極なミートローフ

アメリカの一般家庭の日常生活のことをたくさん知ることができるドラマ「デスパレートな妻たち」通称デス妻。料理好きの私にとっては、アメリカの代表的な家庭料理の話題が随所に出てくるのが最大の楽しみ。
なんといっても、ドラマのメインキャストの一人であるブリーは、料理上手が高じてアメリカ家庭料理の本を出版し、ベストセラーとなったあと、ケータリングビジネスでも成功。前半のシーズンでは、毎日家族のためにすべての家事を完璧にこなし、レストランの料理のような手の込んだお洒落な料理を完璧に作る主婦でもあります。作中では、彼女の腕によりをかけたおいしそうな美しい料理がたくさん出てきます。

【海外ドラマ頻出料理】デス妻・ブリーとリネット、対極な2人の対極なミートローフ

©Disney

そして今回の注目したいのがもう一人のメインキャストのリネット。キャリアウーマンとしてバリバリ仕事をこなす傍ら、家庭では超わんぱくな息子3人に手を焼いている毎日。完璧さなんて求める暇もないほど、とにかく忙しさに翻弄される日々を送っています。
そんな対照的な2人に、どちらも「ミートローフ」の話題がからんだことがありました。

【海外ドラマ頻出料理】デス妻・ブリーとリネット、対極な2人の対極なミートローフ

©Disney

「フレンズ」人気エピソード フィービーのクッキーに見るアメリカのクッキー観

「フレンズ」ファンの間では有名な「フィービーのクッキー」

アメリカの日常生活に密着したストーリーで、アメリカの文化や習慣を学べるドラマ「フレンズ」
英語のリスニングを学びたい方にもおすすめの海外ドラマとして、長年安定した人気を誇っています。
そういう私も、「フレンズ」を何度も何度も視聴して、本当にリスニングが上達した一人です。

繰り返し見ていると、詳しく知りたくなるポイントがたくさんあるドラマですが、特に料理好きな人が興味を引かれるポイントのひとつに、「フィービーのクッキー」があります。

感謝祭には食べ比べ!ドラマ「フレンズ」とアメリカのマッシュポテト

左がフィービー。
©Warner Bros.Entertainment

ドラマの中で、クッキーのエピソードは2つあります。
「オートミールレーズンクッキー」「チョコチップクッキー」、どちらも手作りです。

「フレンズ」人気エピソード フィービーのクッキーに見るアメリカのクッキー観

チョコチップクッキー

アメリカのクッキーは、手作りが最良とされている

一家団欒の夕食にもテイクアウトやデリバリーを利用することが日常という家庭も多く、またこちらの記事でご紹介した「チキンヌードルスープは、缶詰を温めるだけというのが一般的」など、意外なものまで買って済ませることも多いアメリカ。
しかし、クッキーに関しては家庭でよく手作りされていて、焼きたてのあつあつ(「オーブンフレッシュ Oven fresh」といいます)を食べるのが最良とされているようです。

「フレンズ」人気エピソード フィービーのクッキーに見るアメリカのクッキー観

オートミールクッキー

子供の頃からお菓子作りが趣味で、「バターを使うお菓子は、できたてよりも数日置いた方がおいしい」が常識だと思っていた私、「焼きたてのあつあつがおいしい」がアメリカの常識であることには、カルチャーショックを受けました。
単純に好みの違いでしょうか。
アメリカのクッキーには、バターよりもショートニングマーガリンが多用されるからかもしれません。

世界一おいしい?フィービーの「オートミールレーズンクッキー」

シーズン1エピソード12で、フィービーは自分が嘘を言わない人間であることを証明するために「私が作るオートミールレーズンクッキーは世界一おいしい」と、レイチェルに食べさせます。
レイチェルは「何これ、ホントおいしい!」と感激。

「フレンズ」人気エピソード フィービーのクッキーに見るアメリカのクッキー観

©Warner Bros.Entertainment

ほんの数秒だけのやり取りなのですが、「世界一おいしい」とされたせいか、このクッキーのレシピを知りたいと思った方はたくさんいたようで、ネットで検索すると翻訳レシピなどが出てきます。
アメリカで出版された「フレンズに出てくる料理」の本の中でも紹介されたのだそうです。

このクッキー、私もよく作って主に朝食代わりに食べています。
オートミールレーズンも美容にいい食材ですよね。
「世界一」は少し大げさかもしれませんが、確かにおいしいクッキーですよ。

「フレンズ」人気エピソード フィービーのクッキーに見るアメリカのクッキー観

オートミールクッキー

海外ドラマ頻出・日本未発売メニュー サブウェイの「ミートボールサンド」って知ってる?

「チャック」に出てくるおいしそうなサンドイッチが気になる!

ドラマ「チャック」にときどき出てくるサンドイッチ、気になりませんか?

チャックの親友で家電量販店「バイモア」の同僚のモーガン、店長のビッグ・マイク、ジェフスターとレスターがよく食べている設定で登場します。
白い紙で包まれた細長いサンドイッチは、実在するサンドイッチショップ「サブウェイ」のものです。

日本未発売メニュー サブウェイの「ミートボールサンド」知ってる?【海外ドラマ頻出】

実在する商品名やお店が名前そのまま出てくるから面白い

アメリカの「サブウェイ」はこのドラマのシーズン2のスポンサーだったそうです。
商品名が必ず隠される日本のドラマや映画とは異なり、アメリカのドラマや映画では、実在するお店や商品も、名前を隠さずそのまま放送されるところが面白いですよね。

サブウェイのサンドイッチは、全く宣伝っぽさはなく、さりげなくストーリーに溶け込んで登場します。
実在するものが出てくると、現地の生活感がよりリアルに伝わってくるものです。
そして、登場人物が大好きで食べている、とずっと見ていると自分も買いたくなってくるのが消費者。
やり方が上手だなぁと思います。

ドラマには、日本の「サブウェイ」にはないメニューが登場する

サンドイッチ店の「サブウェイ」は日本国内にもありますね。
「チャック」で見て食べたくなって、買いに行ったことがある方もいると思います。
ただし、あいにく日本のメニューはアメリカと異なるため、ドラマと同じサンドイッチを食べてみたいと思っても、ほぼ買えないんですよねー。
いつかこの、長~いパーティーサンドの実物を見てみたいものです。

日本未発売メニュー サブウェイの「ミートボールサンド」知ってる?【海外ドラマ頻出】

©Warner Bros.Entertainment

日本未発売メニュー サブウェイの「ミートボールサンド」知ってる?【海外ドラマ頻出】

©Warner Bros.Entertainment

日本未発売メニュー サブウェイの「ミートボールサンド」知ってる?【海外ドラマ頻出】

©Warner Bros.Entertainment

それにしても本当に長い
まず日本ではお目にかかれないサイズ感…豪快!さすがアメリカです…

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

夏になると食べたくなるかき氷

日本の夏の風物詩、かき氷。今年何回食べましたか?
イチゴ、レモンなどの合成着色料のシロップに練乳という組み合わせ、山盛りの細かい氷
子供の頃は特別なものだと思っていました。
この味で育ってきた者にとってはこれで懐かしくおいしいものですよね。

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

暑くてかき氷が恋しくなるのは日本だけではありません!
当然、世界中にその土地独自のかき氷があるのです。
もちろんシロップやトッピングの具材も異なります。

「ハワイファイブオー」に登場するシェイブアイス、日本とちょっと違う

ハワイが舞台の刑事ドラマ「Hawaii Five-Oハワイファイブオー」に登場したシェイブアイス(かき氷)
「日本と違う!」と気になったので、ご紹介します!

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

シェイブアイスが出てきたのは、シーズン1エピソード7。
母親が殺され、父親は容疑者とされて逃走中。
保護された娘はショックと不安で元気がない。
そんな女の子を元気づけたいと、ファイブオーの女性刑事コノが声をかけて、シェイブアイスを食べに連れていきました。

まず「お腹すいてる?シェイブアイス食べに行かない?」とのセリフに、「えっ、お腹がすいたら食べるものなの?」と驚きました。
ハワイのシェイブアイスには、トッピングとして白玉やあずきが入るので、おやつ感覚なのかもしれません。

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

ハワイのシェイブアイスは、日本にはありえないほど種類が豊富なので、選ぶのを迷ってしまいます。
このシーンでコノが食べているのは「グレープ」です。

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

うーん、日本にもあってもよさそうだけど、めったにないですね。
「私はグレープが一番好きなの。なぜかって言うとね、ほら、舌が紫色になるから。」と舌を出して見せ、やっとこの女の子の笑顔を引き出したのでした。

日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」
日本と異なる「かき氷」文化発見!ハワイ好き必見のドラマ「ハワイファイブオー」

「ツイン・ピークス」ドーナツとチェリーパイを手にクーパー特別捜査官が帰ってくる!

「ツイン・ピークス」ドーナツとチェリーパイを手にクーパー特別捜査官が帰ってくる!

ドラマのセリフどおりに帰ってきた「ツイン・ピークス」

先日ふと、WOWOWの最新ドラマの広告が目に留まりました。
ツイン・ピークス」。
20年前ぐらいに流行ったアメリカのドラマであること、私も覚えています。
デヴィッド・リンチならではの奇妙とも言える独特な雰囲気と間、そして難解なストーリーに当時の私は全くついていくことができませんでしたが、男友達の一人はこのドラマにどっぷりとハマっていました。
彼同様、世界中にカルト的なファンがいることでも広く知られているドラマです。

このドラマのシーンの中で、登場人物のローラが「25年後に会いましょう」と言っていたとおり、約25年ぶりに続編が制作されました。
7月22日からWOWOWで新作が放送されます。その名も「ツイン・ピークス The Return」。
アメリカでは5月からすでに放送が始まっており、大きな話題を呼んでいるようです。
日本でも、旧作の大ファンだった方たちは特に、もう楽しみでしょうがないのではないでしょうか。

約20年前に、一世を風靡したドラマ「ツイン・ピークス」のあらすじは?

20年前にはついていけなかった私も、現在、興味深く旧作を視聴しています。

舞台はアメリカの静かな田舎町「ツイン・ピークス」。
高校の「プロム・クイーン」にも選ばれた美しい女子高校生ローラ・パーマーが、美しいまま遺体で発見されたことから、物語は始まります。
この街にFBIのクーパー特別捜査官が派遣され捜査が進んで行く中で、静かな田舎町「ツイン・ピークス」に潜んでいた様々な問題や、複雑に絡み合う隠れた人間関係が発覚していきます。

あれほど一世を風靡した印象があったのに、旧作はシーズン2のみだったと知ると改めて、それほど強いインパクトのある作品だったことに驚かされます。

新作となる「ツイン・ピークス The Return」では、当時のキャストの25年後の様子、クーパー捜査官、そして新たなストーリー展開がどうなるのか?楽しみです!

クーパー捜査官とドーナツ、チェリーパイ

当時ドラマの流行とともに、クーパー捜査官の大好物であるチェリーパイドーナツも話題になりました。
特に、ドーナツ。
テーブル一杯に広げられたドーナツを見たら自分で食べたくなって、ドーナツ屋さんに走ったという人は多かったようです。

なお、シーンにドーナツが登場するたびになぜこのように等間隔でずらっと並べられているのかは、全くもって不明です。 こういう、意味がよく分からないけどデヴィット・リンチのこだわりを感じる、なんだか不思議でおもしろいところもハマるポイントなのでしょう。

Donuts

『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』嵐・二宮主演で今秋映画化!映画の前に原作をチェック

二宮和也主演映画化で注目!『料理の鉄人』演出家の小説デビュー作

嵐の二宮和也さん主演で映画化されると話題の小説が『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』

嵐・二宮主演でこの秋映画化!満漢全席を超える幻のコース料理を巡る陰謀と愛の物語

あの伝説的人気番組『料理の鉄人』を手掛けた田中経一氏の小説デビュー作だ。

『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』は、戦争の混乱の中で消失してしまった200品を超える壮大なコース料理「大日本帝国食彩全席」のレシピをめぐるストーリー。
物語は現代の日本と、第2次世界大戦頃の満州、2つの時代・2つの土地をつないでゆく。

2つの時代の2人の主人公と「大日本帝国食彩全席」

かつて清の始皇帝が宮廷料理人に作らせた“世界で一番スケールの大きなコース料理”が「満漢全席」と呼ばれていた。
第二次世界大戦の時代、日本の威厳を示すことを目的として、その「満漢全席」を超えるコース料理を作れと命じられたのが1人目の主人公・西島秀俊さん演じる山形直太朗
彼は絶対味覚、つまり“麒麟の舌”を持つ料理人で、天皇の料理番を勤めていた男だった。
この命令により山形は、「大日本帝国食彩全席」制作に専念するため単身満州へと渡り、その生活全てを捧げて13年の年月をかけてレシピを開発することとなる。

嵐・二宮主演でこの秋映画化!満漢全席を超える幻のコース料理を巡る陰謀と愛の物語

一方、二宮和也さん演じるのは現代日本に生きる2人目の主人公・佐々木充
彼もまた“麒麟の舌”を持ち、どんな料理でも再現してみせる特技を持っているのだが、料理に情は不要、技術の鍛錬こそが必要だという考えで、料理への情熱を失ってしまっていた。
佐々木は、依頼人が人生最後に食べたい物を再現して高額の報酬を得る「最期の料理人」として働いていたが、その再現能力を聞きつけた男に、消失してしまっていた「大日本帝国食彩全席」レシピの再現を依頼される。

嵐・二宮主演でこの秋映画化!満漢全席を超える幻のコース料理を巡る陰謀と愛の物語

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

自意識過剰な主人公に共感できる?西加奈子「うつくしい人」

今回取り上げるのは、以前紹介した『きりこについて』に続いて、西加奈子さんの作品です。

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

『うつくしい人』は32歳の蒔田百合という女性が主人公。
百合は自意識過剰な性格で、常に他人の目に対して怯えながら過ごしています。
「他人から見て、自分はどう見えるか」が物事を決める尺度となっていて、歴代の彼氏も「連れていて自慢できるかそうでないか」が決め手でした。
学生時代には嫌いではない(むしろ好きだった?)クラスメートへのいじめに加担していて、その過去が百合の心の暗い闇の原因となっています。

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

このように「好きでも無い彼氏と付き合う」「嫌いではないクラスメートをいじめる」など、自分の意志ではなく「他人の目」を基準に生きていくようになった理由の大きな存在が「姉」です。

百合の「姉」はとても「うつくしい人」であり、純真無垢な女性です。
純真無垢すぎて、学生の頃のある事件を皮切りに人間関係につまずき、ずっと「ひきこもり」をしています。
しかし、ひきこもりとなった今でも、姉は美しく、やさしく、やはり純真無垢なまま存在しています。

他人の目を気にしなさ過ぎて社会生活を送れない姉を反面教師のようにして、他人の目を気にすることで自分を守ってきたつもりだった百合でしたが、あることがきっかけでとうとう職場で急に泣きだしてしまいます。
それほどに、自らを他人の視線から追い込んでしまっていたのでした。

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

突然泣き出すという醜態をさらしてしまった百合は、一人旅に出ます。
この旅立ちの場面では、百合の病的なまでの自意識の描写が読んでいて辛いほどです。
しかし、百合はこの旅行でとあることに気づき、大きな変化を遂げるのです。

百合を潤す唯一の存在、それがビール

ホテルについた百合は、ホテルのバーへ行きます。
そこで、ちょっと失礼でうだつの上がらないバーテンの坂崎と謎のドイツ人マティアスと出会います。
この二人が、百合の救世主となるわけですが、ここで注目したいのが「ビール」です。

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

この小説は主人公である百合の語りで物語が進んでいきます。
先ほど書いたように、百合は他人の目を非常に気にします。
あの人にとって自分はこう見えているのではないかという考えはもちろんのこと、あの人、本当はこの仕事がしたくないのではないかという、少々余計なお世話なことまで考えています。
つまり、百合の頭の中は他人と自分のことでいっぱいなのです。

しかし、ビールを飲む瞬間はその百合の頭の中の独白がスっと消えているような感覚を覚えるのです。
つまり、何も考えていない、素の自分が出ているような感覚です。
このホテルの場面以外にもビールを飲むシーンは何度かあるのですが、特に前半の百合がまだ苦しんでいる時にすら、そのように感じました。
重苦しい世界の中、ビールだけが軽やかに百合の喉を潤しているような印象でした。

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

百合はお金持ちのお嬢様で、身に着けている物はすべて一流です。
歴代の彼氏も外車を乗り回しているようなタイプばかり。
そんな百合がバーであえて「ビール」を自然にオーダーしていることから、そのような印象を持ったのかもしれません。
だって、お嬢様ならシャンパンとか何だかおしゃれな飲み物を頼みそうだと思いませんか?

西加奈子『うつくしい人』 他人の目を気にすることに疲れてしまったあなたへ

きっと、「大好きなビールを飲みたい」と思う、百合自身の隠れていた意志が自然と出ていたシーンだったのでしょう。
好きな飲み物(特にお酒!)を前に、自分を偽ることなど出来ませんものね。

Written by フジイ

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『バー・リバーサイド』様々なカクテルとマスターの名言 大人の為の会話劇小説

二子玉川の落ち着いたバーで一杯

ちょっと感傷的になったり、気持ちに整理がつかない時…ちょうどいい距離感で優しく話を聞いてくれ、おいしいお酒を作ってくれるバーでマスターとおしゃべり、なんて出来たら良いですよね。
今回紹介するのは、吉村喜彦さんによる小説『バー・リバーサイド』です。

様々なカクテルと沁みる名言 大人の会話劇小説『バー・リバーサイド』

舞台は東京・二子玉川にある席数わずか7席の小さなバー・リバーサイド。
静かな空気感の落ち着いたお店で、マスターの川原草太とスタッフの新垣琉平が働いています。
彼らと6人の個性的な常連客が繰り広げるのは、それぞれの世界で様々な境遇を経た者たちならではの印象的な会話劇
物語は5つの短編で構成されていて、ページ数も多くないので、あっという間に読み終えてしまいます。
全ての短編にそれぞれの会話にちなんだお酒や料理が登場するのですが、作者の吉村さんは元サントリーの宣伝部勤務というだけあって、その描写が独特なのです。

様々なカクテルと沁みる名言 大人の会話劇小説『バー・リバーサイド』

沖縄の独特な埋葬に使われる「花酒」をつかったカクテル

たとえば、うどん店で働く客・井上が語るのは、あの世とこの世に関するちょっとスピリチュアルな話題。
スタッフ・琉平が出身地である沖縄特有の死者の埋葬方法を語り始めます。

沖縄には洞窟が多く、昔はその中に亡くなった人を葬って、亡くなって七年後に親戚がその骨一本一本を丁寧に泡盛で洗ったそう。
使う泡盛はできれば、与那国島で作られる60度の泡盛・花酒がいいとされていたといいます。

井上が静かに相槌を打ちながら琉平の話を聞いていると、突然マスターが目を輝かせていいます。

「あ、いいカクテル、思いついた!」

シェイカーに氷を入れ、花酒をとろりと注ぎ、
シャカシャカ、シャカシャカッ—-
マスターがシェイカーをかなり激しく振り続ける。
シェイクの決め手は
氷を微妙に溶かし、酒に水を入れることだ。
水と空気によって、酒が開かれ、香りがたち、液体の味はまろやかになる。
円錐形のグラスに、できたかカクテルをやさしく注ぎ入れた。
シェイクのおかげで、液体の色は、ほんのり霧のかかったような乳白色。
グラスには、きめ細かい霜がびっしりとついている。
マスターは表面張力ぎりぎりまでグラスに液体を注いだ。
グラスの縁の液体が、ぷっくり膨れてエロチックだ。

「マスター。これ、何ちゅうカクテルなん?」
花酒シェケラート。花酒をシェイクしただけ。」

花酒シェケラート、こんな素敵な文章で描かれると味がとっても気になりますよね。
他にも、紹興酒と烏龍茶で作るドラゴン・ウォーター、桃のカクテル・ベリーニ、ジョニ赤のハイボール…様々なお酒が個性豊かに登場します。

様々なカクテルと沁みる名言 大人の会話劇小説『バー・リバーサイド』

心に響くマスターの名言の数々

フリーライター・森の話題は、少しディープな人間関係の悩み。
落ち込み気味の森にマスターが差し出すのは、ダーティ・マティーニです。
こんな言葉をかけます。

「マティーニは時を重ねるごとに、どんどんドライになっていきました。でも私は、影と湿り気のある方が好きなんです。だから、森さんにはこのカクテル。
切れ味が過ぎると、その鋭い刃で、自分が怪我をすることになります。加減が難しい。少し澱(おり)を残しておいた方がいい。そう。自分の『いい加減』を見つけることがたいせつです」

こんな風に、マスターの心に響く名言が飛び出しまくるのも、この小説の魅力の一つ。
その言葉の数々は決して説教臭かったり押し付けがましいことはなく、常連客達の心に寄り添おうとしているようで、説得力があります。

様々なカクテルと沁みる名言 大人の会話劇小説『バー・リバーサイド』

おいしいカクテルや料理と共に、人情味あふれるマスターの言葉たちが、お客さんの悩み・葛藤・迷いをそっと包んでくれるバー・リバーサイド。
読んでいると、常連客達の心や体のどこかに詰まっていた何かがすっと押し流されていくのを見守っているような感覚になります。
帰路につく頃に、どこかすっきりとした表情になっている彼らの顔が浮かぶよう。
春や初夏の涼しい夜、お酒を片手に是非読んでいただきたい一冊です。

Written by にゃも

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【星新一の時代小説】お金よりお米が価値を持った時代 殿さまの食卓はぬるい?

ショートショートの神様・星新一がつむぎ出した、時代小説

「ショートショートの神様」と呼ばれ、SF作家として認知されている星新一の時代小説があるのをご存じでしょうか。
その名も『星新一時代小説集』です。

【星新一の時代小説】お金よりお米が価値を持った時代 殿さまの食卓はぬるい?

文庫で出版されているのは、「天の巻」「地の巻」「人の巻」の3冊。今回のテーマは「天の巻」に収録されている「殿さまの日」というお話に出てくるごはんです。

現代とは比にならない?その時代の「お米」の重要性

「何万石の大名」というフレーズを聞いたことがあると思います。
この「石(こく)」は、お米の量を表す単位。
江戸時代は、そのお殿さまの領地は面積ではなく、収穫できるお米の量「石高」によってその広さを表していました。
もちろん、石高の高い大名ほど力が強いことは言うまでも有りません。
1石=1,000合だそうで、いったい何合炊きの炊飯器がいるのかと、どうでもいい想像をしてしまいそうです。
私は時代劇や大河ドラマを観る程度の知識しかなく、今までで読んだことのある時代小説も「鬼平犯科帳」くらいでしたので、この時代のお米の重要性がこんなにも大きいとは知りませんでした。
収穫できるお米の量は大名の力を表すだけではなく、すべての人々への生活に直結したものだったのです。

【星新一の時代小説】お金よりお米が価値を持った時代 殿さまの食卓はぬるい?

「殿さまの日」

「殿さまの日」は、そんな時代のとあるお殿さまの1日が書かれています。
殿さまは一日中、いろいろな事を考えています。回想、妄想、思想さまざまなことが頭をぐるぐると支配している様です。しかし、いろいろな事を考えても、立場上直面した問題を解消することが出来ません。

というのも、殿さまが問題解決のために何かをしようとすると、家臣によけいな気づかいをさせてしまうばかりか、幕府や他藩との関係に変化が起こってしまいますので、なかなか行動を起こす事ができません。
そのため、殿さまはいつも通りの1日を何事もないかのように過ごすしかないのでした。

【星新一の時代小説】お金よりお米が価値を持った時代 殿さまの食卓はぬるい?

形式張った殿さまのごはん

そんな殿さまの一日の最初のご飯は、朝8時の朝食です。ご飯の為のお座敷に移動していただきます。
メニューは「うめぼし、大根のみそ汁、とうふの煮たもの、めし」だそうで、意外と質素。
つぎの間に控えている「毒見役」が一通り口に入れて、問題が無いか確認。さらにその毒見役を監視する小姓もいます。
そんな厳戒態勢の中、殿さまの前に運ばれてきたごはんはすっかりぬるくなっています。

【星新一の時代小説】お金よりお米が価値を持った時代 殿さまの食卓はぬるい?

「たまには温かいご飯が食べたいなぁ」とでも思うのかと想像していましたが、殿さまは子どものころから、ぬるくなったご飯しか食べたことがないので「料理とは、ぬるくつめたいものなのだ」と殿さまは「思いこんで」いるそう。
温かいご飯を食べたことがないので、そもそもホカホカの温かいご飯の存在を知らないということなのです。

何だかとてもかわいそうな気がしてきました。殿さまとは本当に窮屈なお仕事です。
すべてが形式にのっとっていて、平和な時代でさえも「毒見役」が必要なのです。
思案ばかりしている殿さまがその存在に疑問を抱いても、形式上その役職に人間を置いておかなければいけません。
食事中に小姓に何と話しかけるかも、吟味に吟味を重ねた他愛のない形式張った言葉です。
いつも周りにいる側近たちですら、殿さまが形式張った行動をとる裏でこんなに思案をしているとは、露ほども知らないでしょう。

正午には「すまし、野菜の煮つけ、いわしのひもの、めし」と、やはり思いのほか質素なお昼ご飯を食べます。
もちろん、形式上毒見役を経由しているので冷えています。
食べながら、「たまには変わったものが食べてみたい」と思いつつも「無理なことだ」とあきらめている殿さま。
ひとことそんなことを言ってしまえば、料理係が責任をとらされ、さらに食費が財政を圧迫してしまうと容易に想像できるからです。

夕飯も代り映えのしないメニューを食べ、甘い物(干し柿)か酒どちらにするか問われた殿さまはぬるくなったお酒を飲みます。
物足りない気持ちもありますが「殿さまのからだは藩のものでもある」ため、自らの欲求のために必要以上の飲酒はできません。

【星新一の時代小説】お金よりお米が価値を持った時代 殿さまの食卓はぬるい?

炊き立てごはんの美味しさを知らないお殿さま

お米の取れ高が重要だった時代の大名(殿さま)が、ご飯が最もおいしい状態、つまり炊き立てのご飯の美味しさを知らないとは、何だか切ないですね。
物語のキャラクターとはいえ、藩のトップという立場の殿さまの周囲すべてに気を使いながら過ごしている様子が、家庭で奥さんに気を使って肩身の狭い思いをしている旦那さんのようで、何だか胸がきゅっと締め付けられてしまいました。

読了後、炊き立てご飯を食べてながら、自分の国で収穫されたお米をしっかりと味わい、こんな平和な世の中にしてくれた先人たちへ思いを馳せていきたいな…と少々感傷的になってしまいました。

Written by フジイ

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【おいしい小説】『また次の春へ』父が作った豚コマともやしのトン汁

「東日本大震災」を題材にした短編集『また次の春へ』

重松清著の『また次の春へ』は、2011年3月11日の「東日本大震災」をテーマにした、7編の短い物語が集められた1冊です。

【おいしい小説】変わる味と変わらない味『また次の春へ』我が家の味トン汁

“その日”の話というよりは、“その後、残された人たち”の話に焦点を当てていて、感傷的なお話ではなく、ほとんどが現実的で人の感情がじわじわと心に入りこんで来るようなお話ばかりです。 津波にさらわれたまま、見つからない息子や親。残された家族は、「ただいま」って帰ってくるんじゃないかという思いと、もうだめなんだろうという思いの狭間で揺れ動きます。残された人々は、それぞれの想いを抱えたまま生きていくことになるのです。
読んでいる最中は、目を背ける事をしてはいけないような気持になり、ほとんど貪るように読みふけってしまう、そんな本でした。
その7編の小説のうち、特にじんわりと心に染みたお話が「トン汁」です。

「トン汁」のはじまり

この「トン汁」というお話はのスタートは東日本大震災ではありません。主人公の母親が急死し、そのお葬式から帰ってきた場面から始まります。
母親は冷え込んだ早朝、トイレに行こうとした瞬間に倒れて、脳溢血(のういっけつ)で亡くなりました。この時、主人公は小学3年生。中学1年生の兄と小学5年生の姉がいました。それから、これまで料理をしたこともなかったであろう、父親。残された4人家族は、呆然としたまま葬式が行われた田舎から帰宅したのです。
帰宅してしばらく後に、お隣のおばさんが申し訳なさそうに“生協の食料品”を持って訪ねてきました。2週間前に母親が注文した食材が届いたので、預かっていてくれたのです。生前、母親が注文しておいてくれたシーズン前の酸っぱい「いちご」を、それぞれの方法で食べる子どもたち。

【おいしい小説】変わる味と変わらない味『また次の春へ』我が家の味トン汁

いちごを食べ終わると同時に、今まで黙ってこたつに入っていた父親がこういうのです。

“腹、減ってないか”。

これが、この家の味となる「トン汁」が誕生した瞬間でした。

【おいしい小説】変わる味と変わらない味『また次の春へ』我が家の味トン汁

「トン汁」の役割

父親がこの日作ったトン汁の具は、生協から届いた“豚肉のコマ切れ”“モヤシ”でした。母のトン汁とは大違いの具材でしたが、父親は“モヤシだったら包丁も使わずにすむんだし”“お父さんのオリジナル料理だ”と言って、笑います。この時、主人公ははじめて「お母さんがもういない」現実を目の当たりにして、ようやく泣く事ができたのです。

父親が初めて作ったトン汁は、あまりおいしくありませんでした。しかし、このトン汁はその後“我が家にとって大切な、特別な料理になった”のです。もちろん、具は「豚肉」と「もやし」のみのままで。

【おいしい小説】変わる味と変わらない味『また次の春へ』我が家の味トン汁

その後、3人の兄弟はそれぞれ大人になり、結婚後も「トン汁」を特別な料理として、それぞれの家庭で作り続けます。兄は父親のオリジナルレシピのまま、姉はいろいろなアレンジを加えながら、そして主人公は豆腐を入れたトン汁を“わが家のトン汁”としています。
この家族にとっては、トン汁が「家族の団結」の味であり、傷ついた気持ちを何とか守ろうとする、後ろ盾のようなものだったのだろうと思います。

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家族の戸惑いをまとめてくれた「トン汁」

母親の急死という突然の出来事に戸惑い、泣く事すらできなかった残された家族たち。そのどうしようもない気持ちを、父親が作る温かいトン汁がまとめてくれました。
「家庭の味」や「おふくろの味」ではなく、その瞬間でしか生まれない「我が家の特別な料理」は、奇跡にも近い味。「失恋した日に食べたスイーツ」や「受験前日に食べたごはん」…特別な料理が生まれるきっかけは、誰にでもあるものです。その時の味や気持ちは、いつまでも忘れられない大切なものとなって、その人の心に残り続けるのです。

Written by フジイ

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