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【食べてはいけない?】世界各国のご法度料理の歴史

 

「愛の林檎と燻製の猿と―禁じられた食べものたち」 (著書―スチュワート アレン 訳―渡辺葉)

という食文化について書かれた本が面白い、という話を聞いて読んでみました。

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世界中の過去現在の食べてはいけない食べ物とその理由、文化的歴史的背景を

わかりやすい文章で書かれた興味深い本でした。

 

日本でも昔は4本足の獣を食べることが禁じられていたので、

兎を食べる際に「兎の耳って羽根なんですよ?知ってました、だから兎は実は鳥なんです」

と言い訳して食べた、という苦労話も残っていますね(だから兎は匹ではなく1羽、2羽と数えます)

 

今でもイスラム教徒は豚を食べないしヒンズー教徒は牛を食べません。

「豚は汚らわしい生き物だから」 「牛は神の使いだから」などの宗教的な理由が原因です。

しかしこれらの肉食を禁じた本当の理由は冷蔵庫もない時代、

保存状態の良くない不衛生な肉を食べて食中毒を起こさないよう

庶民を啓蒙するためだったと言われています。

今と違い当時は食中毒のメカニズムを科学的に説明出来なかったので

手っ取り早くこれらの食事を止めさせるために宗教や神の名が騙られました。

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この本では最初に人類最古の禁忌の食べ物、禁断の実 について語られます。

アダムとイブはこれを食べたばかりに楽園を追放されました。

 

禁断の実はイチジクのことだ、と旧約聖書には書かれています。

しかし禁断の実と聞いてイチジクではなくリンゴを連想した方も多いのではないでしょうか?

喉仏を英語で adam’s appleというのはアダムが林檎をノドに詰まらせた名残だとも言われています

(だから喉仏は男性にしかないのだとか…)

 

リンゴがイチジクに取って代わった理由この本によるとキリスト教による文化侵略が原因です。

キリスト教は当時、土着の宗教や文化を貶めることが日常茶飯事でした。

メソポタミアで信仰されていた光の神様はキリスト教によって「蠅の王」という悪魔だと貶められました。

先住民を排斥し弾圧することでキリスト教はその勢力を広げたのです。

 

自然を信仰するアイルランドの先住民はリンゴを神聖な食物として崇拝していました。

そんなアイルランド先住民を貶め邪悪だと吹聴するために、

キリスト教徒たちは聖書の記述を曲げてまで

「禁断の実とはリンゴである、リンゴを食べる彼らの魂は堕落している」と吹聴して回りました。

その影響でキリスト教社会では長い間

「林檎は赤くて、丸みを帯びて官能的なフォルムをしている、人を堕落させる甘い味がする

断面が卑猥な形をしている」 と因縁に近いことを言われ忌避され、食べた人間は厳罰に処されました。

敬遠な信仰心ではなく、多民族を排斥するためにリンゴはタブーな食べ物とされ、

リンゴの甘さは悪魔の誘惑、リンゴのすっぱさは悪魔に魂を売り渡した代償などと言われました。

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リンゴに限らず甘い食べ物は悪魔の誘惑を招くと言われ特にチョコレートは長い間

「悪魔の尻のように黒い」と厳しく弾圧され貴族しか食べることが許されませんでした。

1700年代のヨーロッパでSMの語源になったサド侯爵が刑務所に入れられた理由の一つに

庶民の女にチョコレートを食べさせたことが原因と言われています。

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リンゴの影響を受けてか保守的なヨーロッパ社会ではアメリカからやって来たトマトも

18世紀初頭までリンゴ同様禁断の食べ物とされ、

「食べると歯が抜ける、匂いを嗅ぐと発狂する、

柔らかくて淫らな果肉から淫乱に汁を垂れ流す情欲をかきたてる不道徳な食べ物」などと酷い言われようでした。

またトマトがソースの原材料となったことも反感を買った理由でした。

「食事を質素に、楽しむべきものではない。」というキリスト教社会で

味覚を楽しませるソースは反キリスト的食材とみなされたのです。

 

一方、同じくアメリカからやって来たジャガイモは模範とすべき食べ物として

ヨーロッパ社会で受け入れられました。

土にまみれたトマトと違い素朴で愚直なフォルム、無精生殖で育つさまが

マリアの処女受胎を連想させるなどと言ったことが原因だったようです。

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キリスト教社会での話を紹介しましたがこの本は他にも世界各国で禁忌とされた食べ物と

そこへ至った経緯が書かれていて大変ためになりました。

同時に自分は食事のタブーの少ない現代の日本で生活が出来て良かったなぁ、と強く思った次第です。

by tori

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