【白い食べ物と赤い食べ物 〜 モンゴル遊牧民にならう自然のいただき方①】
モンゴル在住ののびです。
広い草原を移動式住居(ゲル)と家畜を連れて移動する、モンゴルの遊牧民は自然のなかで、自然と共に生きています。
モンゴル人は肉食だという人もいますが、私は「家畜食」だと思っています。つまり家畜の全てを食べる、しかも合理的に。
その一例が「白い食べ物と赤い食べ物」と言う考え方。
今回は、この白い食べ物を3つ紹介します。
白い食べ物ってなんのこと?
ざっくり言うと「乳製品」のことです。
でも日本で食べるレベルじゃない。
モンゴルの家畜は「五畜」とも言いますが、これはヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、そしてラクダを指します。
この全てのお乳の全てをいただくのが、モンゴル遊牧民流です。
「スーテーツァイ」はおもてなしの象徴
遊牧民宅を訪問するとまず出てくる白い食べ物(お椀に入っているのがスーテーツァイ、鍋に入っているのがウルム、水色の器に入っているのがアーロール) (撮影:のび)
遊牧民の家に限らず、特に冬場にモンゴルの家庭を訪問すると、ほぼ確実にふるまわれるのが、ミルクティーと言う意味のスーテーツァイ。
いや、スーテーツァイが出てこないと、逆にもてなされた気持ちにならないくらい日常生活に溶け込んだ飲み物です。
作り方は家庭でそれぞれ多少違いますが、沸かしたお湯に茶葉(団茶、紅茶でも良い)を入れ、さらにミルクを入れて沸騰直前まで温め、岩塩で味付けします。
ほんのりと塩味がして、何倍でも飲めてしまう家庭の味です。
冬はここにバターや羊の脂を入れ、体を暖めます。
「ウルム」は「The best of 白い食べ物」
遊牧民宅でいただいたウルム。パンに塗っていただきます (撮影:のび)
ミルクの一番美味しいところを濃縮させて作るのが「ウルム」。
弱火で煮立てたミルクを、おタマですくい上げては落とす、これを何度も繰り返して攪拌します。
こうやって上層部に集まる乳脂肪分に、小麦粉を少し加えて一晩寝かせると翌朝には5mm程度の膜が張っています。
これがウルム。
ミルクの一番美味しいところが凝縮された食べ物です。
味はバターのようで濃厚な生クリームのような、ほんのりと甘さもあります。
遊牧民のお宅を訪問すると、スーテーツァイと共に最初に出されるが、これをパンにつけて食します。
白い食べ物の最高の部分を最初にいただくと、至福の一時が口のなかから広がります。
「アーロール」は懐かしい「母の味」
スーパーで売られているアーロール (撮影:のび)
ウルムの後に残った脱脂乳から作られるチーズとは別に、少し手間をかけて作るのが「アーロール」。
脱脂乳を発酵させのちに再び加熱し、少し固めたのちに天日干しして固めます。
大きさや硬さには色々とバリエーションがありますが、基本的に「硬め」で「酸味」の強いお菓子になります。
アーロールは、どこのスーパーに行っても売っていて、職場でもよく「ポリポリ」と大きい音を立てて食べています。
モンゴル人にとっては、懐かしいお母さんの味です。
さいごに
この他にも、チーズや馬のお乳から作るお酒もあります。
ちなみに、家畜のミルクは本来家畜の赤ちゃんのものです。それを言い方が悪いですが、人間が横取りしていることになります。
だからこそ恵みに感謝し、全てを飲み、全てを食べ尽くします。そして毎朝、遊牧民たちは自分たちがミルクを飲む前に、空の神様、山の神様、大地の神様に祈りを捧げ、ミルクを撒きます。これも太古から続く、遊牧民の感謝の流儀です。
ライター のび
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