脳で感じる【おいしい絵本】おいしくてなつかしい、おばあちゃんの台所
みなさんには、「おばあちゃんのうち」がありますか?
お盆やお正月に親戚が集まる‘いなか’だったり、親が仕事や用事で出かけるときに、ちょこっと子どもたちをあずかってもらう近くの ‘じっか’だったり。
多くの人にとって、きっとなつかしい「おばあちゃん(おじいちゃん)のうち」の記憶が、おだやかによみがえる絵本を見つけました。
工藤ノリコ作『ピヨピヨ おばあちゃんのうち』(佼成出版社)。主人公は5羽のヒヨコのきょうだいです。
『ピヨピヨ おばあちゃんのうち』
工藤ノリコ(佼成出版社)
タラコくちびるのキャラクターたち
作者の工藤ノリコさんは、子どもだけでなく若い女性、海外では台湾でも人気の絵本作家さん。「ピヨピヨシリーズ」以外にもたくさん絵本を出されていて、食事のシーンがよく出てきます。もちろん描かれている食べものは、すべておいしそう。パソコンではなく色鉛筆や水彩絵具を使って描いているので、透明感かつ厚みがある、味わい深い絵を楽しむことができます。描かれた食べものは、その味や香りがじわじわ〜〜っと伝わってきて……ヤミつきになることまちがいなし。
この「ピヨピヨシリーズ」、登場するキャラクターが、ほぼ全員タラコくちびるなんです!ネコやコウモリ、さらには魚や虫までタラコくちびるで表現できるなんて……すごい。(ちなみに、タコとゾウはタラコくちびるではありませんでした)
味って、脳で感じているのですね
きょうは両親(ニワトリ)がふたりでおでかけ。5羽のヒヨコたちはその間、おばあちゃんのうちでお留守番します。
『ピヨピヨ おばあちゃんのうち』
工藤ノリコ(佼成出版社)
ヒヨコたちは庭のさくらんぼとシソをつんで、台所へ。おばあちゃんは大きなおなべを出してきて、シソを煮てジュースにします。シソジュースを冷やしている間、白玉だんごを丸めてゆでて、フルーツポンチをつくります。
『ピヨピヨ おばあちゃんのうち』
工藤ノリコ(佼成出版社)
……っていうだけなのに! もう全部が全部、おいしそう!
太陽の光にきらきらと輝くサクランボは、つまんですぐ口にいれたくなるような色つや。(つんだばかりのサクランボって、冷やさなくてもおいしい)
シソがジュースになったときの鮮やかなむらさき色を見ていると、さわやかな酸味が口いっぱいに広がります。
フルーツポンチには、編み目がなくてまんまるの、庶民的なプリンスメロン。ヒヨコたちがお手伝いしてカットしたバナナも入っていますね。ああ、安心できる庶民のデザート。
『ピヨピヨ おばあちゃんのうち』
工藤ノリコ(佼成出版社)
氷水で冷やしている小鍋には、フルーツポンチ用のシロップ。きっとおばあちゃんが手早くつくっておいたのですね。お水と白砂糖だけの、やさしい甘みのシロップ。
絵本を眺めているだけなのに……脳にしみこんだ‘おいしい記憶’のおかげで、何度も幸せな気分を味わえます。
ぐっとくる昭和の台所用品
アルミの大きな両手鍋、鍋の下に敷いた新聞、赤や青の格子柄のふきん、花柄のポット……。古道具ほどレトロではなく、淡いなつかしさを感じる台所の風景があります。近所のスーパーや金物屋で売っていて、昭和の時代におばあちゃんの台所にやってきた、ただ長く使っているだけの、あたりまえの道具の愛らしさよ!
こうして細部が楽しめるのも、すみずみまでていねいに描かれた絵本の醍醐味ですね。なつかしさやおいしい記憶だけでなく、ぜいたくな時間までもがつまった一冊です。
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ピヨピヨ おばあちゃんのうち
工藤ノリコ(佼成出版社)
きょうは、お父さんとお母さんがお出かけなので、おばあちゃんのうちでお留守番です。 ピヨピヨたちは、おばあちゃんのお手伝いをしながら、ドキドキ、ワクワクのおやつ作り。どんなおやつができるのかな…?
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